「四谷怪談」と「四ツ谷雑談集」②

四ツ谷雑談集のあらすじは、以下。

江戸時代の四ツ谷に田宮家という武家があり、疱瘡の後遺症で見た目が悪く性格も悪いお岩という娘がいた。そのお岩の父親が体調を崩したため、急いで婿を取ることにした。「小股くぐりの又市」という者を介して、浪人である伊右衛門が俸禄目当てに婿に来た(余談ですが又市は京極夏彦の「嗤う伊右衛門」にも登場し、その後京極夏彦の「巷説百物語シリーズ」で主役の一人になっています。元ネタの端役を自身の別作品の主人公にするというのは面白いですね)。お岩のことをどうしても好きになれない伊右衛門は上司である伊東喜兵衛の妾であるお花を好きになる。その後お花は伊東喜兵衛の子を妊娠する。伊東喜兵衛は「子ができても役にも立たず、金もかかる」という理由で、お花をどこかに嫁にだそうとするも話がまとまらない。そこで伊東喜兵衛は伊右衛門と共謀し、お岩をいいようにだまして伊右衛門と離縁させ、家から追い出し、伊右衛門とお花は結婚する。お岩は別の場所で働きながら暮らしていたが、自分が騙され田宮家を乗っ取られたことを知り、怒り狂い走り出しそのまま行方不明になる。それから14年後に伊東家と田宮家及びあまり関係のない隣家の者までが次々と死んでいき、本人達や周りの者が「お岩の祟りである」と信じる。結局三家とも跡継ぎもいなくなり潰える(主犯の一人の伊東喜兵衛だけはなぜか89歳まで生き天寿を全うする)。

私が興味深いと思ったのは、①お岩の行方不明から祟りまで14年かかっているという点、②お岩の幽霊が実際に登場するシーンが一切ない点、です。①については、おそらくこれは実際にこうだったのであり、伊東家と田宮家で何人も人が死んだため「偶然でこんなに人が死ぬわけがない。お岩の祟りに違いない」ということにされたのだと思います。不自然な点はそれとして現実の事件に忠実に描くことを選んだ点に感心しました。②については江戸時代に書かれた作品であるにも関わらず変に幽霊などを登場させずに客観的な事実のみを描いている点に感心しました(多少の脚色はあるのでしょうが)。

また、この「四ツ谷雑談集」は江戸時代の人の生活がリアルに描かれおり大変面白かったです。吉原で友人同士で遊んでいたところ、借金を返す返さないで刃傷沙汰になり殺人事件に発展する話や、斬首刑になった養親の死体を引き取ったら頭は本人だったが、腕に「南無阿弥陀仏」という入れ墨が入っており、体は別人だったが訴え出るもの面倒だったのでそのまま埋葬した話など変にリアリティを感じてしまいました。

長くなってしまったのでこの辺にしますが、「嗤う伊右衛門」も「四ツ谷雑談集」もとても面白くお勧めです。

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